破局前夜が新生前夜となる
戦争前夜が解放前夜となる
その希な望みを、私たちは棄てない。

特定非営利活動法人 前夜
Tel: 03-5351-9260 Fax: 03-5351-9267 E-mail: npo-zenya@zenya.org


06/9/12   English  Korean
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▼前夜ができるまで

■「前夜」が生まれるまで

 一九九九年、国旗国歌法制化に反対して、「日本で民主主義が死ぬ日」という対話集会をした。そのときの実行委員会のメンバーは、二十代から七十代の世代もジェンダーも出自も活動の場や仕事も異なる市民の有志四十数名。その後も日本の急速な右傾化に対する危機感をもって、私たちは毎年、対話集会を重ねることになった。二〇〇〇年「断絶の世紀 証言の時代――〈戦争の記憶〉をめぐる対話集会」、二〇〇一年「〈コンパッション〉(共感共苦)は可能か?――歴史認識と教科書問題」、二〇〇二年「《反戦》、いまこそ」……。対話集会を開くだけでなく、その間にも学習会や戦争博物館検証フィールドワーク、群読・ひびき読みなど市民の自律的な学習活動にとりくんできた。そのメンバーが「前夜」の発起人のもとになっている。

 私たちは、対話集会を毎年一回、こんなに長く続けるとは当初考えていなかった。しかし残念ながら、日本社会の現実がますます悪くなり、イラクに自衛隊が公然と派遣されるところまできてしまった。同時に、職場でも学校でも忙しさは増し、孤立化もすすんでいる。とくに九〇年代初めからひどくなった排他的ナショナリズム、新自由主義の動きのなかで、冷笑主義や悪しき相対主義が蔓延し、考えること自体に意味がないように思い込まされるような状況になっている。

その中で重要な役割を果たすべきマス・メディアの情報はますます単純化し断片化したものになっている。たとえば、日朝交渉以後、歴史をふまえた考え方をかき消すような力が社会に広がっていると強く感じる。そのような状況で、私たちに何ができるのか? 何をすべきなのか?

 この困難な状況を、歴史性をふまえ、長いスパンで考える示唆をふくむようなメディアを自分たちでつくるしかない、そのために雑誌をつくろうという話になっていった。

 ■なぜNPOか?

雑誌を、しかも「反戦・反差別・反植民地主義」をかかげた総合雑誌を発行することは、商業主義が圧倒的な力をもっている現在の日本社会で、資金面はもちろん、出版流通の構造的問題からも大変困難なことである。

出版文化を市民も参加してつくるという意識と行動がなければ、この社会の出版文化の厚みはどんどんうすくなっていくだろう。だからこそ発行する主体である私たち自身が資金も出し合い、自律的・自発的にメディアをつくりだそう、書き手も読者も巻き込んだ文化運動としてやろうということになった。そして、書き手も読み手も創り手が連帯して出版文化活動を継続的に成立させる事業スタイルとして、NPO(特定非営利活動法人)を選択した。さらに、雑誌発行にあわせて、《前夜セミナー》という市民の自律的な学習活動をもうひとつの柱とすることにした。

まず起ち上げ資金として発起人が五十万円ずつ出し合い、さらに賛同金を集めた。それをもとに活動を開始し、今年の四月二日にNPO設立総会を開催。それから雑誌の準備、読者を広げる活動をし、七月三日には、東京・星陵会館で創刊号の特集テーマ「文化と抵抗」と題した創刊プレ集会をブロードキャスターのピーター・バラカンさんをゲストに迎えて開催した。四〇〇人をこえる参加があり、その後、新聞各紙に報道されたこともあって、問合せや定期購読の申し込みが続いている。書店での発売は、影書房に引き受けていただき、創刊前から書店を一軒一軒まわり注文を集めることも会員の人たちの協力を得てやっている。

 ■そして、前夜は

創刊号の特集テーマは「文化と抵抗」とした。「文化」の場に「抵抗」が乏しく、「抵抗」の場で「文化」が貧しい日本社会の現状を奥深いところから批判し、それを克服する方向性を見出したい。そのことなくしては、抵抗は脆弱なものでしかありえず、文化は貧困なままであるだろうと考えるからである。そして、前夜は、反戦・平和の「質」を、被抑圧者・マイノリティの視点への想像力をもって検証することだということをあらためて肝に銘じたい。
憲法改悪前夜まできてしまった現在、何の「前夜」になるか、何の「前夜」にするかは、私たち一人一人にかかっている。                                   

(岡本有佳)